共感マップ(Empathy Map)は、ユーザーの体験を視覚的に整理するためのシンプルなフレームワークです。
概要
共感マップは、Dave Gray が開発したツールで、ユーザーの体験を4つの象限で整理します。ユーザーインタビューや観察の後に使用することで、チーム全体でユーザーへの理解を共有できます。
4つの象限
言っていること(Say)
ユーザーがインタビューや観察中に実際に口にした言葉をそのまま記録します。「〜が面倒」「〜が分からない」など、ユーザー自身の表現を使うことが重要です。
考えていること(Think)
ユーザーが口にはしないが、考えていると推測されることを記録します。「本当は〜したいのでは?」「〜を心配しているのでは?」といった推察です。
していること(Do)
ユーザーの実際の行動を記録します。言葉と行動が矛盾している場合、行動の方がより真実に近いことが多いです。
感じていること(Feel)
ユーザーの感情状態を記録します。不安、喜び、苛立ち、期待など、体験に伴う感情を特定します。
実施の手順
- 中心にユーザーのペルソナを配置する
- 4象限を描く
- チームメンバーがそれぞれの象限に付箋を貼る
- 付箋をグルーピングし、パターンを見つける
- 矛盾点や驚きのある発見に注目する
ワークショップで繰り返し見られるパターン
200回以上のワークショップで繰り返し見られるのは、「Think」象限が空欄のまま進んでしまうパターンです。「Say」と「Do」はインタビューの記録から埋まりますが、「Think」は推察が必要なため、チームが「勝手に決めてよいのか」と迷って手が止まります。
実際にやってみると、「Think」の空欄を埋めようとする議論の中から、チームが暗黙に抱えていた仮定が次々と出てきます。「このユーザーは実は〜と思っているのではないか」という問いかけが、次のユーザーインタビューで確認すべき仮説の源泉になります。推察でよい——ただし、推察と事実を色で区別して記録する習慣をつけることが大切です。
ポイント
- 推測と事実を区別する — 観察に基づく事実と、チームの推測を分けて記録する
- 矛盾を大切にする — 言っていることとしていることが異なる場合、深い洞察のヒントになる
- 一人のユーザーに集中する — 複数のユーザーを混ぜず、一人ずつマップを作成する
共感マップで整理した内容は問題定義フェーズでのPOVステートメント作成に直接つながります。
参考文献
- Dave Gray, Gamestorming: A Playbook for Innovators, Rulebreakers, and Changemakers, O’Reilly, 2010
- Nielsen Norman Group, “Empathy Mapping: The First Step in Design Thinking”, nngroup.com, 2017