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アイデアは出たのに選べない——創造フェーズの後に起きる絞り込みの失敗5つと、決め方の手順

付箋は100枚出たのに、最後の投票で無難な案が残る。アイデア出しのあとの絞り込みで起きやすい5つの失敗と、評価の軸を先に決めてから選ぶ手順を、架空のワークショップの場面で順に示す。

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創造フェーズのワークショップで、付箋が壁いっぱいに貼られた。参加者の表情も明るい。ところが休憩のあと、「では、有望なものに1人3票ずつ入れましょう」と投票を始めると、残るのはいつも似た顔ぶれの案になる。実現できそうで、説明しやすく、誰も反対しない案だ。

発想を広げる力と、選ぶ力は別物で、選ぶ段階には選ぶ段階の設計が要る。 アイデアが出なかったのではなく、出たものを選ぶ手順に問題があった、というケースは少なくない。

発散と収束の考え方は用語解説:発散思考と収束思考にまとめてある。ここでは、収束の場面で実際に起きる失敗を5つに分けて、手当てを示す。


絞り込みで起きる5つの失敗

失敗1:基準のない投票

「いいと思うものに投票」と言われると、各自が違う物差しで選ぶ。ある人は面白さで、ある人は作りやすさで、ある人は上司が喜ぶかどうかで票を入れる。集計すると票の多い案は出るが、何が評価されて残ったのかは誰にも説明できない。

手当て:投票の前に、評価の軸を2つか3つ書き出して全員で合意する。 軸は次の中から、そのプロジェクトに合うものを選べばよい。

  • 共感フェーズで見えた困りごとに、どれだけ直接答えているか
  • 次の2週間で、試作して確かめられるか
  • 実現するときに、いちばん不確かな部分はどこか

軸は多すぎると使えない。3つを超えたら、最も大事なものに絞る。

失敗2:先に話した人への偏り

壁に貼った順に説明していくと、最初に説明された案に印象が引きずられる。声の大きい人や役職の高い人が「これは面白い」と言えば、その場の空気が決まる。

手当て:説明の順番をくじで決め、投票は全員が同時に行う。 誰がどの案に入れたかが、他の人の投票に影響しない形にする。付箋を裏返して貼る、紙に書いて同時に出す、といった簡単な方法でよい。チームの心理的安全性が低い場では、この手当ての効果が特に大きい。

失敗3:似た案で票が割れる

「アプリで通知する」「メールで知らせる」「LINEで連絡する」のように、同じ方向の案が複数あると、票は3つに割れる。一方、少し変わった案は票が1つか2つで、割れた3案よりも少なく見える。票が最も集まるのは、人気のある方向よりも、案の数が多かった方向になりやすい。

手当て:投票の前に、似た案を束ねる。 束ねたあとで、束ごとに代表案を決めて票を数える。束ね方に迷ったら、「この2つは同じ試作で確かめられるか」を基準にするとよい。確かめ方が同じなら同じ束、違うなら別の案として残す。

失敗4:無難な案ばかり残る

作りやすい案は、説明が簡単で、リスクが低く見える。そのため最終的に残りやすい。ところが、作りやすい案は他社も簡単に作れる案でもあり、ユーザーの困りごとへの答えとして弱いことが多い。

手当て:最終候補を選ぶときは、「無難な案」と「尖った案」を最低1つずつ残す。 全部を無難な案で固めると、試作の段階で学ぶことが少なくなる。尖った案は失敗しても、何が足りなかったかが分かる。

失敗5:理由が残らない

ワークショップの翌週、別のメンバーが「なぜこの案になったのか」と聞く。そのとき、「みんなで決めた」としか答えられないと、案は根拠を失う。後から状況が変わったときに、選び直すべきかどうかも判断できない。

手当て:選んだ案ごとに、「評価の軸のうち何が高かったか」と「まだ不確かな点」を1行ずつ書いて残す。 この記録が次のフェーズの出発点になる。


軸を先に決める5ステップ

失敗への手当てを、作業の順番に並べ直すと次のようになる。

  1. 評価の軸を2〜3つ書き出して合意する(失敗1)
  2. 似た案を束ね、束ごとに代表案を決める(失敗3)
  3. 順番をくじで決めて、1案ずつ短く説明する(失敗2)
  4. 全員が同時に、軸ごとに点をつける。または票を入れる(失敗2)
  5. 上位の案から、無難な案と尖った案を1つずつ最終候補に残し、選んだ理由を1行書く(失敗4・5)

進行の目安は、案が20件前後なら60〜90分。時間が足りないときは、2の「束ねる」を省かない。ここを省くと、失敗3がそのまま起きる。


軸ごとに点をつける簡単な表

投票だけだと、何が評価されたかが見えない。そこで、候補ごとに軸別の評価を簡単な表にする。点数は細かくせず、「高・中・低」の3段階で十分だ。

案困りごとへの答えの強さ2週間で試作できるかいちばん不確かな点
A:初回だけ説明を出す中高説明を読まれるか
B:使いながら学べる画面にする高低作り込みが必要
C:担当者が電話で補う高高人手が続くか

この表を見ると、「Bは魅力的だが2週間では試せない」「Cは地味だがすぐ確かめられる」という議論ができる。表があれば、議論は票数1つに頼らず、軸ごとの違いを材料に進められる。


選んだ後は、試作で確かめる

収束は次のフェーズへの入口にあたる。選ばれた案は、正解になったわけではなく、これから試作で確かめる仮説の位置にいる。

最終候補に「いちばん不確かな点」を書いておけば、試作の目的がそのまま決まる。試作の考え方はプロトタイプフェーズの進め方で扱っている。また、そもそもの問いが広すぎたり狭すぎたりしてアイデアが偏った場合は、HMWの問いの調整に戻って問いを書き直すほうが早いことがある。


やってみよう:30分の見直し

最近のアイデア出しで選ばれた案が手元にあれば、次の順に点検してみよう。

ステップ1(5分): 選ばれた案について、「なぜこの案になったのか」を一言で書く。一言で書けなければ、失敗5の状態にある。

ステップ2(10分): その選び方に評価の軸があったかを確かめる。なければ、今から2〜3つ軸を書き出す。

ステップ3(10分): 軸ごとに、選ばれた案と落ちた案を「高・中・低」で比べる。落ちた案のほうが高い軸が見つかれば、選び直す価値がある。

ステップ4(5分): 選ばれた案のいちばん不確かな点を1つ書き、次の試作で確かめることを決める。

30分の見直しで、投票の結果が「みんなで決めた案」から「理由の説明できる仮説」に変わる。


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