共感

共感フェーズ——ユーザーを深く理解するための観察と対話

デザイン思考の最初のフェーズ「共感(Empathize)」を解説。ユーザーインタビュー、観察、没入体験の手法と実践のポイント。

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共感(Empathize)はデザイン思考の最初のフェーズであり、最も重要な土台です。ユーザーの行動、感情、動機を深く理解することで、真に意味のある解決策の基盤を築きます。

なぜ共感が重要なのか

d.school の教えでは、「デザイン思考は共感から始まる」とされています。これは単なるプロセスの順番ではなく、人間中心設計の姿勢そのものを意味しています。

自分たちの仮説や思い込みではなく、ユーザーが実際に経験していることを理解することで、本当に解くべき問題を発見できます。

共感の3つのアプローチ

1. 観察(Observe)

ユーザーの行動を自然な環境で観察します。重要なのは、ユーザーが言っていること実際にしていることの違いに注目することです。人は自分の行動を正確に説明できないことが多いため、直接的な観察が不可欠です。

2. インタビュー(Engage)

ユーザーインタビューを通じて、行動の背景にある動機や価値観を探ります。効果的なインタビューのポイントは以下の通りです。

  • 「なぜ?」を繰り返す — 表面的な回答の背後にある本当の理由を掘り下げる
  • オープンクエスチョンを使う — 「はい/いいえ」で答えられない質問をする
  • 沈黙を恐れない — ユーザーが考える時間を与える
  • 感情に注目する — ユーザーの表情、声のトーン、ボディランゲージを観察する

3. 没入体験(Immerse)

ユーザーと同じ体験をすることで、頭だけでなく身体感覚を通じて理解を深めます。病院のサービスを改善するプロジェクトでは、デザイナー自身が患者として入院体験をすることもあります。

共感マップの活用

共感マップ(Empathy Map)は、ユーザーの体験を4つの象限で整理するツールです。

  • 言っていること(Say) — ユーザーが口にした言葉
  • 考えていること(Think) — 言葉にはしないが考えていること
  • していること(Do) — 実際の行動
  • 感じていること(Feel) — 感情や不安

ワークショップで繰り返し見られるパターン

200回以上のワークショップで繰り返し見られるのは、共感フェーズを「終わらせる」ことを急ぎすぎるチームの多さです。「インタビュー3人やりました、終わりました」と次に進もうとする場面は定番です。実際にやってみると、3人目と4人目のインタビューで全く新しい視点が出てくることが珍しくありません。

もう一つよく目にするのが、インタビューの録音・書き起こしをせず「なんとなく覚えている内容」でチームが議論を進めるパターンです。「あのユーザーは〜と言っていた」が少しずつ書き換わり、2日後には都合の良い解釈に変わっている。共感フェーズの精度は、記録の精度で決まります。

まとめ

共感フェーズは、デザイン思考の品質を左右する最も重要なプロセスです。十分な時間をかけてユーザーを理解することが、後続のフェーズすべての成功につながります。次の問題定義フェーズでは、ここで得たインサイトをPOVステートメントに変換します。


参考文献

  • Stanford d.school, Bootcamp Bootleg, Institute of Design at Stanford, 2011(改訂版2018)
  • IDEO.org, The Field Guide to Human-Centered Design, IDEO.org, 2015
  • Liz Sanders & Pieter Jan Stappers, “Co-creation and the new landscapes of design”, CoDesign, Vol.4, No.1, 2008