試作を見せる前に、確かめたいことを1行で書く——プロトタイプの目的を決める3つの型
試作を作って見せたのに、感想は「いいですね」だけで次に何をすればよいか分からない。原因は試作の出来ではなく、何を確かめるかを決めずに見せたことにある。確かめたいことを1行にする書き方と、「使い方」「価値」「作れるか」の3つの型を、架空の場面で順に示す。
試作を作って見せたのに、感想は「いいですね」だけで次に何をすればよいか分からない。原因は試作の出来ではなく、何を確かめるかを決めずに見せたことにある。確かめたいことを1行にする書き方と、「使い方」「価値」「作れるか」の3つの型を、架空の場面で順に示す。
高齢の親を持つ人向けの見守りアプリを考えるチームが、画面の試作を3日で作り、5人に見せた。返ってきた感想は、「分かりやすい」「いいと思います」「あったら便利ですね」。チームは手応えを感じたが、会議が終わってから、ふと気づいた。次の週に何を直せばよいのか、誰にも分からない。
試作そのものに問題はなかった。問題は、見せる前に「何を確かめるのか」を決めていなかったことにある。以下の場面は、説明のために作った架空のものだ。
試作の作り方はペーパープロトタイピングにまとめてある。ここでは、作る前と見せる前に決めておくことだけを扱う。
試作を見せる前に、次の1行を埋める。
この試作を使って、(誰)が(場面)で(何をするか) を確かめたい。
先ほどのチームが書けたのは、最初は「アプリの印象を知りたい」だった。これは1行の形をしているが、確かめたいことになっていない。印象は、見せればいつでも何かしら返ってくるからである。確かめたいことは、結果によって次の行動が変わるものでなければならない。
書き直したのが、次の1行である。
この試作を使って、離れて暮らす子ども世代が、親の様子を確認する場面で、通知を開いて30秒以内に状況を判断できるかを確かめたい。
こう書くと、見せ方も、観察する点も決まる。感想は聞かない。通知を開いてもらい、かかった時間と迷った箇所を見る。
確かめたいことは、おおまかに3つの型に分けられる。
| 型 | 確かめること | 試作の例 | 観察する点 |
|---|---|---|---|
| 使い方 | 迷わず操作できるか | 紙の画面を並べたもの | 手が止まった箇所、聞き返された言葉 |
| 価値 | 使う理由が生まれるか | 手作業で通知を送る簡易版 | 使い続けたか、頼まれなくても開いたか |
| 作れるか | 技術やコストが成り立つか | 動く最小の部品 | 処理時間、手間、失敗した回数 |
先ほどのチームの1行は「使い方」の型である。同じ試作でも、「使い方」を確かめるのか「価値」を確かめるのかで、作るものと見せる相手が変わる。
「価値」を確かめたいのに、画面だけの試作を見せても、返ってくるのは「分かりやすい」という使い方の感想にとどまる。使う理由が生まれるかは、画面を見ただけでは分からないからだ。逆に、「使い方」を確かめたいのに、動く部品まで作ると、確かめる前に3週間かかる。
試作を見せたあとの記録も、最初の1行を軸にする。
感想の一覧は残してよい。ただし、判断に使うのは、最初の1行に答えた部分だけである。「あったら便利」という言葉は、1行の問いに答えていないので、次の行動の根拠にはならない。
試作に対する構えそのものは、プロトタイプマインドセットで扱っている。何を仮定しているかを先に洗い出したいときは、仮説マッピングが使える。
最初の一歩は、いま手元にある試作を1つ選び、見せる前の1行を書いてみることである。書けなければ、その試作はまだ見せる段階にない。