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HMWの問いが「広すぎる」「狭すぎる」を直す——How Might Weを3回書き直して適正サイズに合わせる手順

How Might We(HMW)の問いは、広すぎるとアイデアが散り、狭すぎると解決策が1つに決まる。ホワイトボードで最初に出た問いを、広すぎる・狭すぎる・解決策が混入している、の3つの失敗型で点検し、3回の書き直しで発想が広がる適正サイズに合わせる手順を、架空の例で順に示す。

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「HMW、書けました。『どうすれば、社員がもっと幸せに働けるだろうか』です」

ワークショップの2時間目、付箋を貼り終えたチームがそう言った。問いとしては悪くない。ただ、ここから出てくるアイデアを想像すると、福利厚生、評価制度、オフィス環境、リモート勤務、と話が四方八方に散っていく。逆に、別のチームの問いは「どうすれば、毎週月曜の朝会をアプリで10分短縮できるだろうか」だった。こちらは答えが1つしか出ない。

How Might We(HMW)は、観察で見つけた課題を発想の入口に変える問いの形式だ。1970年代にP&Gで使われ始めたとされ、のちにIDEOやスタンフォード大学のd.schoolを通じて広まった。形式は単純だが、問いのサイズを合わせる作業が思いのほか難しい。この記事では、最初に出た問いを3回書き直して、発想が広がる大きさに合わせる手順を示す。

HMWの問いには3つの失敗型がある

最初に書いた問いは、次の3つのどれかに当てはまることが多い。

失敗型問いの例起きること
広すぎるどうすれば、社員がもっと幸せに働けるだろうかアイデアが拡散し、チームが何を選べばよいか決められない
狭すぎるどうすれば、月曜の朝会をアプリで10分短縮できるだろうか答えが1つに決まり、他の案が出る余地がない
解決策が入っているどうすれば、社内SNSで部署間の会話を増やせるだろうか手段が先に決まり、検証されないまま作業が始まる

3つ目は見落とされやすい。「社内SNSで」の部分は、まだ誰も検証していない解決策だ。問いの中に手段を入れた時点で、発想の幅は手段の中に閉じてしまう。

例:「新入社員の離職」を、3回書き直す

ここからは、架空の例で書き直しの過程を追う。ある企業の人事チームが、入社1年目の社員の聞き取りから、次の観察を得たとする。

  • 配属後の最初の1か月、誰に何を聞いてよいか分からなかったという声が複数あった
  • 上司は忙しそうで、質問を後回しにしたという話があった
  • 同期とは話せるが、同期も同じ状況で、答えを持っていなかった

1回目:最初の問い

どうすれば、新入社員が辞めないようにできるだろうか

観察から出た課題は「聞き方が分からない」だったのに、問いは「離職」という結果の話になっている。結果は多くの要因で決まるため、問いが広すぎる。これでは研修制度から給与まで、あらゆる案が並んでしまう。

2回目:観察に戻して絞る

どうすれば、配属後の最初の1か月で、新入社員が必要な質問をできるようになるだろうか

観察された状況(最初の1か月・質問できない)に問いを戻した。これで検討対象が「質問できる状態」に絞られる。ただ、「必要な質問」の中身がまだ曖昧で、チーム内で解釈が割れそうだ。

3回目:誰にとっての何かを確かめる

どうすれば、配属後の最初の1か月、新入社員が「こんなことを聞いたら迷惑かもしれない」と感じる場面で、気兼ねなく質問できるだろうか

観察の中にあった感情(迷惑かもしれないという遠慮)を問いに入れた。場面と感情が具体的になるので、アイデアのヒントが自然に出る。メンター制度、質問専用の時間枠、匿名で聞ける窓口、先輩側から声をかける仕組みなど、手段は複数に分かれる。一方で、特定の手段には絞られていない。

書き直しで確かめる3つの点

書き直しのたびに、次の3点をチームで声に出して確認するとよい。

  1. 観察に根拠があるか。 問いに入っている状況や感情は、観察やインタビューで実際に出てきたものか。チームの推測が混ざっていないかを見る
  2. 手段が入っていないか。 「アプリで」「制度で」「研修で」といった言葉が入っていたら、その部分を外して書き直す
  3. 答えが複数出るか。 その問いから、少なくとも3つの異なる種類の案が思い浮かぶか。1つしか浮かばないなら狭すぎる。10個以上が別々の方向に散るなら広すぎる

3点目の「3つの異なる種類」は、あくまで目安だ。問いが適正かどうかは、実際にアイデア出しを始めて、チームの手が止まらないかどうかで最終的に分かる。

問いをいくつ並べるか

HMWの問いは1つに絞り込まなくてもよい。観察の切り口が複数あるなら、サイズの違う問いを並べておく方法もある。

  • 広い問い:新入社員が質問しやすい職場とはどんな状態か
  • 中くらいの問い:最初の1か月に、遠慮なく聞ける場面をどう作るか
  • 狭い問い:上司が忙しいときに、質問を後回しにさせない方法は何か

広い問いは新しい切り口を探すときに使い、狭い問いは具体策を詰めるときに使う。発想の段階(アイデア発想フェーズ)では中くらいの問いを軸にして、行き詰まったら広い問いに戻る、という使い分けができる。

前段のPOV文との関係

HMWの質は、前段の問題定義にかなり左右される。ユーザー・ニーズ・インサイトが揃っていないPOV文から問いを作ると、書き直しを何度繰り返してもサイズが定まらない。問いがうまく書けないときは、HMWをいじるより、POV文の書き方に戻って、インサイトが観察の事実に根ざしているかを確認したほうが早い。方法の全体像はHMWの手法ページにもまとめている。

まとめ

HMWは、最初に書いた1行をそのまま使わず、3回書き直すくらいのつもりで扱う。広すぎれば観察に戻して絞り、狭すぎれば手段を外して幅を戻し、解決策が入っていれば手段を抜く。観察に根拠があるか、手段が入っていないか、答えが複数出るか。この3点を声に出して確認するだけで、アイデア出しの質は大きく変わる。問いのサイズを合わせる作業は、そのままチームが何を課題と見ているかを揃える作業にもなる。


参考

  • IDEO.org. The Field Guide to Human-Centered Design(How Might We の項)
  • Hasso Plattner Institute of Design at Stanford (d.school). Design Thinking Bootleg

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