「もしあったら使いますか」と聞いたインタビューは、何も教えてくれない——直近の1回を聞く5つの質問
ユーザーインタビューで「こういうサービスがあれば使いますか」と聞き、全員が「使いたい」と答えたのに、作ってみると誰も使わない。仮定の質問が空振りする理由と、「最後にそれをしたのはいつですか」から始めて過去の具体的な1回を聞き出す手順を、架空の場面で順に示す。
ユーザーインタビューで「こういうサービスがあれば使いますか」と聞き、全員が「使いたい」と答えたのに、作ってみると誰も使わない。仮定の質問が空振りする理由と、「最後にそれをしたのはいつですか」から始めて過去の具体的な1回を聞き出す手順を、架空の場面で順に示す。
家事代行の新サービスを考えるチームが、10人にインタビューをした。「忙しい平日の夜に、食事の準備を代わりにやってくれるサービスがあれば使いますか」。10人中8人が「使いたい」と答えた。チームは需要があると判断して試作を始めたが、出してみると、登録した人はほとんど使わなかった。「使いたい」と言った人たちは、嘘をついたのだろうか。
そうではない。「使いたい」と答えた人は、聞かれた質問に誠実に答えただけである。 問題は、答えを集めた質問のほうにあった。本稿では、仮定の質問が役に立たない理由と、過去の具体的な1回を聞き出すための手順を示す。以下の場面は、説明のために作った架空のものだ。
インタビュー全体の進め方はユーザーインタビューにまとめてある。ここでは、質問の中身だけを扱う。
「もしあれば使いますか」と聞かれた人は、そのサービスが手元にある場面を想像して答える。想像の中の自分は、時間に余裕があり、お金も払える。実際の自分が持っている制約は、想像の中には入ってこない。
目の前で熱心に説明している人に、「使いません」とは言いにくい。「使いたい」と答えるほうが、場が穏やかに進む。この答えは、本人の気持ちというより、その場の礼儀を映していることが多い。
人は自分が将来どう動くかを、思っているほど正確には予測できない。「来月から毎朝走る」と決めた人が、その通りに走るとは限らないのと同じである。将来の行動について尋ねても、本人が答えられるのは、自分への期待までである。
仮定の代わりに、すでに起きたことを聞く。起きたことには、本人の制約も、実際にかけた手間も含まれている。
先ほどの例なら、「最後に平日の夜ご飯を用意したのは、いつでしたか」と聞く。「昨日です」「一昨日はコンビニでした」と、日付のある答えが返ってくる。「普段はどうしていますか」と聞くと、答えは平均的な話になり、細部が消える。「最後の1回」と区切ると、記憶をたどって具体的に話せる。
答えが出たら、その日の流れを順に聞く。何時に帰ったか、何を買ったか、誰が作ったか、どこで迷ったか。評価を求めず、起きた順に話してもらう。話の途中で、本人が当たり前すぎて口にしなかった工夫や手抜きが、ぽろりと出てくる。
流れを聞いたあとで、困りごとを尋ねる。「献立を考えるのが面倒だった」「冷蔵庫の中身を思い出せなかった」といった答えが出る。ここで初めて、チームが想定していた「調理の手間」とは違う場所に、困りごとがあると分かることがある。
すでに何かを試した人は、その課題に実際に時間やお金を使っている。宅配のミールキットを試した、冷凍食品をまとめ買いした、という話があれば、課題は本物である。何も試していない人にとっての課題は、まだ「困っている」と言えるほどのものではない可能性がある。 これは、需要の強さを測る手がかりになる。
試した方法に、お金や時間をいくらかけたかを聞く。仮定の値段を聞くより、実際に払った金額のほうが、信頼できる情報である。答えにくい様子があれば、無理に聞かず、おおよその範囲で十分とする。
架空の2人のインタビュアーが、同じ相手に聞いた場面を並べる。
| 仮定で聞いた場合 | 過去で聞いた場合 |
|---|---|
| 「食事の準備を代わりにやってくれるサービスがあれば使いますか」 | 「最後に平日の夜ご飯を用意したのは、いつでしたか」 |
| 「はい、使いたいです」 | 「昨日です。帰りが19時半で、冷凍のパスタにしました」 |
| 学びは「需要がありそう」の1行だけ | 学びは「献立を考える余裕がなく、冷凍で済ませている」「調理より、考える手間が重い」の2点 |
右の列には、試作の方向を変える情報が入っている。調理を代わりにやるサービスより、献立を決めて材料を揃える手間を減らすサービスのほうが、この相手には合うかもしれない。左の列からは、この発見は出てこない。
最初の一歩は、次のインタビューの質問リストから、「〜があれば使いますか」を1つ探して、「最後に〜したのはいつですか」に書き換えることである。